新子安より

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2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

We cannot understand Tato.

わかっていることといえば、彼の身長がおおよそ玄関のドアと同じぐらいの高さで、たびたび頭をぶつけては、照れ臭そうに笑うその顔が無邪気ということぐらいだった。 その日の朝、彼の住むアパートの前に黒山の人だかりができていた。中心にいたのが、彼その…

冷静と冷静のあいだ

そういえば、草木のにおいがあった。 何度目かわからない現実逃避でやってきた山には、人が多く溢れていた。 記憶を辿れば辿るほど、顔がぼやけて思い出せない。あの日、僕たちは日常をなんとか抜け出したくて、申し訳程度の装備で山頂を目指した。なんとな…